「私たちを助けてくれた。だから助けさせて」という言葉が印象に残った。
老人と若者の貧困を描いた作品。舞台こそイギリスだが、日本でも実際に起こっている問題のように思った。
心臓病により働くことができなくなったダニエルはイギリスの生活保護にあたるものを申請する。しかし、点数が満たないからと申請が下りない(電話越しに担当者から「態度が悪い」と言われてて、は?となったりした)。そして、イギリス版のハロワに行ってくれと言われる。
ハロワに行ったものの待ち受けているのは数々の理不尽。
初日に出会ったのがシングルマザーのケイティだ。彼女は2児を抱え、貧困ゆえに遠くから越してきた。慣れない土地で道に迷い遅刻してしまう。遅刻それだけで理不尽にも突っぱねられてしまう。「明日から子供の学校なのにそのお金がない」けれども規則だからと突き返される。その様子に憤り、手を差し伸べたのがダニエルだった。
ダニエルも苦しい。ケイティはそれ以上に苦しい。
ケイティは日本のネット界隈でビッチと言われ自己責任であるとか甘えと言われ断罪されてしまいそうな女性だ。しかし、子供ができたのは女性だけの責任ではない。
貧困に陥ると思考が麻痺する。視野を広げれば最適解が見えてくるのに貧困はその視野を狭めてしまう。そして尊厳すらも奪っていく。
鑑賞後、無力さを感じてしまう。ただ小さくともできることがある。近くにいる困っている人にさっと手を差し伸べるただそれだけのことができるかどうかなのだ。