ハイク以上の長文

ブクマはやばいよ、スターを押しな、スターを。

『君の名前で僕を呼んで』

5/23に俳句した通り、きゅうりおまえってやつはとなったのが、この映画だ。

今んところ今年見た中で一番好きな作品。こんな胸が苦しくなる恋愛映画は初めて見た。

主人公エリオは高校生男子でリベラルな両親と暮らすフランス人。夏の間、彼ら一家はイタリアの田舎で過ごす。その期間中、父が教える大学の学生が毎年研究補佐としてやってくる。この年、研究補佐としてやってきたのが精悍なアメリカ人男性オリヴァー。エリオはいけ好かない奴などとオリヴァーのことを思っていたのだが…。

エリオと恋仲になるオリヴァーの心の機微は当然ながら、両親の心の機微までも描いていたように思う。エリオのご両親はエリオの感情に気づいているんだなという場面が割と最初の頃にあり、それでも何も言わずに見守るという姿勢がすごくいい。

まだ自分の性についてわからない。けれども、本能でオリヴァーに惹かれてしまうエリオ。そこにご両親の昔からの友達であるゲイカップルが登場する場面など本当に素晴らしかった。

ご両親が息子であるエリオを見つめる目線がいつも寛容で優しい。人の多様性を解くように息子を諭し、慰める場面は涙なしには見られなかった。

スフィアン・スティーヴンスの曲がかかるエンディング。エリオが暖炉の前で佇むシーンの切なさ。彼の後ろでは日常を送る家族の姿が見える。それが妙に悲しい。こうなった時、家族ですら語りかける言葉などないのだ。

隣で鑑賞している男性がかなり号泣。その気持ちがすごくわかったが、その後に聞こえてきた友達同士で見に来た観客の「ありがち」という感想。えーそうかな?そんなありがちか??と悶々。時代背景などを考えると、そのときの同性愛のむずかしさ、それぞれの恋愛感情も丁寧に描かれてた気がするけどなぁ。

美少年が出てくる映画『ベニスに死す』もあるけど、私にとってのエリオは、萩尾望都が描いた男子だった。まさか漫画の世界だけだと思っていた男子が!!という想定外の驚き。『トーマの心臓』や『ポーの一族』で描かれた可憐な男子を実写で見る感動。それほどまでにティモシー・シャラメは可憐で美しく、見ているこっちも恋に落ちた。