ハイク以上の長文

Haiku!するには長目で躊躇するやつ用。

俺だって寂しいよ

12月17日の14時公演、本多劇場赤堀雅秋演出の『流山ブルーバード』を観劇。

クズと善人が出てくる構図は映画と同じだったけど、今回の作品のクズはどこにでもいる感じがした。自分もそうかもしれないなと思ったり。あと、この物語で2回公演って役者さん精神的に結構きつそう*1

舞台は千葉県流山市*2。東京は通勤、通学圏内で東京へ出たいというような気持ちが薄い。そんな街で生まれ育った20代後半の男子3人を軸に話が進む。身近な場所で連続通り魔事件が起こっているのにどこか他人事。むしろ報道陣が来ていることが気になってしまう。

3人は中学時代からの友達。実家の魚屋を手伝う高橋*3、おそらく土木作業員で唯一の既婚者の足立*4、東京に出て役者を目指すもののバイト暮らしをしている古川*5。しかし、高橋は足立の妻と不倫していた。そうとは知らない足立は3人の久しぶりの再会を祝う。

3人に直接絡むことがない役を時生が演じていた。偶然電車の中であったら車両を変えたくなるような危険人物。少しでも気にいらないことがあったら因縁をつける*6。しかし、それが「自分はここにいる」そういう存在アピールでもあったし、他者と関わる術であったのかもと思う。

高橋の歳の離れた兄を皆川さんが演じていた。弟とは対照的に兄は心根の優しい人。兄は定期的に苦情を言いに来る隣人を慮るが弟は冷ややか。ある夜、兄は弟が足立の嫁と不貞を働き、なおかつ駆け落ちの算段を立てているのを知る。この弟の軽率な行動を悲しく思ったんじゃないかと思う。翌日、隣人が高橋家のリビングにやってきて古川くん相手に何やら語る。弟はそんな隣人をぞんざいに扱う。弟に対する兄の怒りが頂点に達し、声を荒げる。

「寂しいんだよ!!!!あの人はお子さんを亡くしてからずっーーと、一人なの!!分がる!?誰かと話したいんだよ!俺だって寂しいよ!!!」

弟が知らないはずない隣人の事情。家族と一緒に暮らしていたってろくすぽ会話してなければ孤独だ。弟は自分の寂しさにも無自覚だし、人の寂しさや優しさにも気づいていなかったと思う(気づいていたかもしれないけど目をそらしていた)。

隣人や高橋兄、弟以外の登場人物もみんな寂しさを抱えていた。満たされなさを感じているがゆえの行動が登場人物それぞれにあった。それは現実社会にも重なる。大なり小なり不満があるし、誰しも寂しさを抱えている。ここに出てくる人の中に自分がいても不思議はない。

すべての事情を知った足立が最後に登場するスナックの場面は見ていてつらくなった。最後の乾杯は色々な感情がないまぜになる感じ。この立場になったらと想像したらあぁなるしかない。高橋弟が少しでも他人の気持ちを思いやれたら…。時生が「俺のこと見えてます?」と言っていたのも印象的で、もし高橋兄のような存在が身近にいたら…と、たらればも積もる。兄弟の場面で終わっていくのも良かった。日常会話こそ大事な話。

あと、江古田に住んでいる設定の古川が住んでいる場所を答えるたびに「江古田って中野?」と聞かれてるの笑った。江古田の中野っぽさ。

*1:映画しか見たことないけど、赤堀さんのやつはほかの公演も大変そう

*2:流山おおたかの森の印象が強く若い家族に支持される街という印象がある。意図的にそうしたのかな?と思ったりした。

*3:実質の主人公。賀来賢人が演じていた

*4:大賀が演じていた

*5:若葉竜也が演じている。若葉くんは『葛城事件』の次男の役をやってた子

*6:おそらく通り魔事件の犯人であったと思う