ハイク以上の長文

ブクマはやばいよ、スターを押しな、スターを。

ホームランにならない人生

音楽好きの友達がホントにいいバンドなんだよとfOULについて話していてバンド名だけはもうずっと長いこと知っていた。

私がeastern youthzazen boysを好きになった頃にはもう活動を休止していて、ライブを見ることはなかったし、そもそも曲を聴いたこともほぼなかった。ロック*1を積極的に聴いていた頃もあったが、高校生の頃、ミッシェルガンエレファントのライブで痴漢にあって以来、ロックバンドのライブから足が遠のき、曲そのものも敬遠するようになっていた。

友達からはNUMBER GIRLはもちろん、海外バンドの話なんかもよく聞き、なんならたまに曲を聴くこともあった。ある日、easternの吉野さんのライブ中の話を聞き、このバンドなら自分でも観に行けるんじゃないかと前勉強もなくライブへ出かけ、雷に打たれたかのような衝撃を受ける。それからeasternのライブに行くようになり、曲をまともに聴き始めるようになった。fOULはそんなeasternが立ち上げたレーベル坂本商店に所属していたバンドで、間違いなく自分が好きな感じだったのだ。

映画『fOUL』はfOULのライブをライブハウスで聴いているように感じられる構成になっていた。バンドのメンバーの語りはほぼなく、ひたすら過去のライブ映像が流れる。鑑賞中に、思い出したのがnestや無力無善寺などに出ていた頃のgroup_inouuri gagarnにせんねんもんだいといったバンドだ。友達がなぜ彼らにピンときて、一緒に行こうと誘ってくれたのかが実感を伴って理解できた。彼らの音楽にはfOULの空気感が漂っていたのだ。映画を見て「あ!この感じ」ってなり、当時の友達の「あ!」を追体験しているような気分になる。若い頃、fOULをちゃんと聞いておきたかったなぁと思う反面、私にとっては今が最善だったのかもしれないと思う。

20代後半頃と思われるボーカルギターの谷口健がインタビューに応える映像が流れる。「サラリーマンになっていて、結婚してて、子供がいるといいですよね。それでfOULをやれていたらなおいいかな」。自分の思う幸せをいつでも目指して生きたい。自分が幸せであるって大切なんじゃないかっていうようなことを話していた。

そして、活動休止から約20年たち、メンバーそれぞれがインタビューに答える。谷口健はfOULをやっていない以外はほぼ自分が想像した幸せの中にいるようだった。スーツにネクタイを締めたサラリーマン然とした姿で、ギターを引くときのスタイルや、easternの吉野さんについて語るのがとてもいい。久しぶりにバンドメンバーが集まるときも、ハァハァいいながら「チャリできた」という谷口健の飾らない人柄がなおいい。

楽曲がいいのはさることながら今なお往年のファンから愛されてやまない理由がこういったところにもあるんじゃないかと思う。バンド名の由来通り「ホームランにならない人生」だとしても、彼らは日本の音楽界にしっかりと足跡を残している。映画を見終え、今のfOULのライブを見たい。そう切実に願うのだった。

*1:ジャンルをろくに知らないのでひとくくり