デビュー曲「もうじき冬が来る」をラジオで聞いて好きになって以来、新譜が出るたびに追いかけてきたbonobosが解散した。思い返せば私は20年来のファンだった。とはいえ、ライブを見に出かけたことのないエンジョイ勢で、曲は好きだけどライブはいっかなぁーと流していたのである。
しかし、昨年末だかにぴあかイープラスのサジェスト機能でチケットを勧められたことがきっかけで、解散することやラストライブの会場が野音だとわかった。解散前に1度くらいは生音を聞いておきたいという欲が生まれてチケットの抽選に応募すると運良くゲットできた。
ライブを見ながらこのバンドのいいところってコーラスの美しさや、森本夏子さんの安定したベースの音にあるよなぁとしみじみ思う。
蔡くん*1はライブのっけから安定感がある歌唱を披露し、歌い手としての能力の高さを見せつけてくれた。すげーなぁーと純粋に感嘆したが、やはりいちばん聴き惚れたのは森本さんのベースだ。おさえるべきところではきっちりおさえ、強く出る時には重低音をどっしりと響かせる。絶妙な美声のコーラスと良い、森本さんは稀有なベーシストだと思うのだが、この解散を期に引退するという。とても残念だ。
生音で聴きたかった「Cruisin Cruisin」も新体制後の「Thank you for the music」も聴くことができた。
「Thank you for the music」は初期メンバー時代の原曲も好きだが、現メンバーの洗練された都会的な音はバンドとしてやりたい方向性を如実に示していたように思う。
この2曲が聴けたことで個人的な達成感を得られた一方、もっと前から観に行けばよかったという後悔も生まれた。bonobosはそんな後悔の念を抱かせるほどの、ライブバンドだったのである。
ベースはもちろん、ギターもキーボードも、ドラムも表情が豊かで終始いきいきとしていた。そんなバンドのラストライブを開放的でありながらしっかりとした音を構築する野音で見られてよかったって心底思う。
空が闇に包まれ、周囲のビル群に明かりが灯りだすころに聴く「23区」に涙腺が緩みかける。これほど夜の野音にふさわしい曲もないだろう。
一介のファンである私から言えることなんてない。
でも、
また いつかここ(日比谷野音)で 逢おう
ありがとう さよなら さらに言うと愛してる
メンバーの皆さま、お疲れ様でした。